足音が近づき、リビングのドアが勢い良く開く。
――転がるようにして入ってきたのは銀髪のホスト、安達リョウだ。
「カスミぃ……水ちょーだいっ!」
何となく呂律が怪しい。
香住サンが、水の入ったコップを差し出しながら尋ねた。
「どうしたんですか?仕事は?」
「んー…飲み過ぎてぇ、今日はもう使いもんになんねぇからってぇ、さ。帰れ―ってぇ。」
カチッとした黒いスーツに身を包んだリョウは水をゴクゴクと飲み干す。
「あーぁ…」と、頭を抱えた壱が呟いた。
「…何だよ?」
「アイツ、酒癖悪ィんだよ。」
「へぇー。」
壱は、俺をまじまじと見つめて言う。
「……お前、気をつけろよ。」
「はっ?」
そこで、リョウの大声が部屋に響き渡った。
「千早ぁ!!」
「あ゛?」
リョウはよろけながら立ち上がると、俺に向かってくる。
酒臭ぇ……。
泥酔状態のリョウは、締まりのない顔をしている。
「…ズルい。」
「……は?」
「そんなに綺麗な顔しててズルいーー!!ボクなんか美顔器まで買って頑張ってるのにさ、お前ズルいよぉー!!」
……なんだ?
俺、いま酔っ払いに絡まれてんのか。
「……どーでもいいけど、お前美顔器なんか持ってんのか…。」
壱がポツリと冷静なツッコミを入れる。