「何すんだよっ!?」
当然のごとく立ち上がってキレる梓月の肩を、ガシッと壱は掴んだ。
「…梓月、お前ゲイか?」
「なっ!!?はっ!?うっ、んなわけねぇだろ!!?」
一瞬で顔を真っ赤にする梓月。
「おい、マジかよ。熟女趣味はどうした?」
「なっ!!?」
「……熟女趣味なんだ。」
ボソッと口を挟んだ俺に、なぜか梓月は縋りつく。……気色悪ィな。
「ち、違うんだ!千早ーーっ!!」
俺に擦り寄る梓月を、再び壱は引き剥がす。
「梓月は熟女好きだよなぁ!」
「っテメ!」
「そんなに男と風呂入りたいなら、俺が一緒に入ってやるよ!」
「うっ、オメェじゃねぇーよっ!!」
背後では、そんな感じの言い争いが続いている。
俺は振り向き、見上げた。
――壱を、だ。
くりっとした犬みたいな目をした壱は、唯一俺の秘密を知っている。
だから。
さりげなく助けてくれたんだろう。
なんつーか、こう、むず痒かった。
そういう優しさに慣れていないせいだろうか。