ノックをしてから、俺はドアを開けた。
瞬間、俺は目を見開いた。
肩まであるくらいの金髪を後ろで一つに束ねた少年は、
ボロ布みたいなクシャクシャのパーカーに、ボロ雑巾のようなスウェット。
その上、所々破れている。
少年はマイクを握って、裸足でソファーの上に立っていた。
振り返ると、俺を見据えて「その辺、置いといて」、と無愛想に呟く。
よく通る綺麗な声だった。
異様な格好をしているクセに、整った綺麗な顔立ちをしていた。
華奢な体付きは少年というより少女を思わせて、思わず見惚れてしまったくらいだ。
俺は、注文の料理をテーブルに並べていく。
室内に流れていたのは流行りの曲ではなく、昔の歌謡曲のようで俺も知らない曲だった。
店のスタッフから影で『カラオケボックスの住人』と呼ばれている少年は、俺なんか気にも止めずに歌いだした。