キッチンへ向かうと、そこに香住サンの姿がなくてホッとした。
何か食い物ねぇかなぁ…。
冷蔵庫や引き出しを漁ってみる。
こういう時にカップラーメンでもありゃいいのに。
キッチンをうろついていると、「ただいま」という声がして俺は振り返った。
茶髪の男が大きなカバンを放り投げると、ソファーにドカッと座る。
……確か梓月とかいう奴だよな。
役者を目指しているらしい、第一印象は面倒くせぇ奴だった。
梓月はテーブルにコンビニの袋を投げ出す。
瞬時に、俺は目を奪われた。
食い物か!?食い物なのか!?
梓月は俺の視線に気づくと、コンビニの袋を持ち上げて言った。
「……食うか?」
「いっ!いいのか!?」
俺の食いつきぶりに、梓月はブッと吹き出す。
「んな物欲しそうな顔してたらな。
夜食に、と思って買ってきたけど何か食う気しなくてさ。焼きそばパンだけど、いいか?」
「焼きそばパン!」
何だ、何だ。面倒な奴だと思ったけど、お前もイイ奴じゃねぇか!!