近所のスーパーマーケットに買い出しへ。
ショッピングカートを押しつつ、商品を吟味する香住サンの慣れた様子に俺は感心する。
よく出来た男だ。
ついてきたはいいけど、結局やることがない。
役に立てそうなのは、荷物持ちくらいか…。
「会計してきますね。」
「あぁ…。俺、外で待ってるわ。」
店を出ると、若い女や子供を連れた主婦なんかが行き交っている。
さすが住みたい街ランキングの上位に入るような洒落た街。
俺は深呼吸をしてみた。
平和で穏やかで、時間はゆったりと流れている。
生きることに、ただ必死だった自分が知らなかった世界は、こんなに笑顔で溢れていたのか。
ふと、鼻を掠める甘い匂い。
俺は誘われるように、匂いのほうへと足を進める。
以前、よくシゲさんに言われた。
食いモンの匂いを嗅ぎ分ける千早の鼻は犬並みだな、と。