テーブルにつくと、
ベストなタイミングで白いフリルのエプロンを身につけた男が朝食を運んできた。



白い飯、味噌汁、焼き鮭、卵焼き、漬物。





こんな朝飯らしい朝飯は、テレビドラマでしか見たことがなかったから、俺は妙に感動してしまった。









「…アンタ、名前なんだっけ?」


「はい?」


「悪ィ。俺、人の名前覚えんの苦手なんだ。」



けっこう失礼なことを言ってるにも関わらず、男は微笑んで答えた。




「香住です。香住隼人。」


「香住サン、ね。」






男は長身で、柔和な笑顔を浮かべている。


なんつーか、優男って感じか?





俺は飯を掻き込みながら言った。


「他の奴らは?」


「壱はアルバイト、梓月は劇団の稽古、リョウは夜の仕事に備えて寝ています。起きるのは昼過ぎですよ。」




……バイト、か。

俺も探さねぇとな、やっぱ。







「…野獣みたいですねぇ。」


「はっ?」



テーブルを挟んで目の前に座る香住サンは、俺の食いっぷりを見て笑う。


「千早くんのそういうナチュラルな所いいですね。」


「…そうか?」






何が良いのか、俺にはさっぱり分からなかった。