ついさっきまでの美少女ぶりは、どこへ消えたのか。




俺の後をついてくる花本千早の口は半開き。



何つーアホ面だよ…。





コイツはテーブルの上のご馳走に夢中で、まともに家の中を見ていなかったようだ。




まぁ、初めて来た時は俺も驚いたけど。










一階と二階を繋ぐ階段は真っ白で無駄に広い。


イメージ的には、
童話の『シンデレラ』に出てくる、シンデレラがガラスの靴を落とした階段みたいな。

つまり、西洋風の城みたいなもんだ。





階段を上りきると、正面にステンドグラスの大きな窓。




二階から一階のリビングが見渡せるよう吹き抜けになっていたりもする。



バカデカいシャンデリアがぶら下がってんのも、ここからだとよく見える。










「――んで、そこが香住の部屋で…奥がリョウの……って聞いてるか?」




振り返ると、花本千早はバルコニーへと続くドアを開けていた。







「広……。」


「たまにバーベキューやったりするんだよ。」


「ばーべ…きゅーって何だ?」


「…………。」





コイツ、マジか。


いくらホームレスでも世間知らず過ぎだろ…。




「あ〜バーベキューは……まぁ、そのうちやるだろ。」


「……いつも、あんな感じなのか?」


「あ?」


「…いつも、みんな集まって飯食うのか?」





月に照らされた花本千早の横顔は、やっぱり綺麗だと思った。

あまりに美しく、それは神聖なものである気さえする。



胸の奥が苦しくなって、騒ついて、俺は堪らず目を逸らした。