俺はギターを抱えると、花本千早を見つめる。
芯の強そうな、何もかも見透かしているような瞳が俺を見つめている。
香住も、梓月も、リョウも、期待と好奇心を浮かべていた。
俺は3年前と同じ曲を弾き始めた。
見慣れた部屋にギターの音色が流れていく。
花本千早。いいか、よく聞け。
これが、俺の3年だ。
人生最大の屈辱を味わってから3年、俺は気が狂いそうなくらい毎日音楽と向き合ってきた。
あの日から、ずっとだ。
俺の額に汗が滲み始めた頃、
ふいに聞こえてきた。
声。
顔を上げると、
俺のギターに合わせて唄う花本千早がいた。
力強く、
たくましく。
美しい声で聞かせるロック。
それは、砂漠に咲く小さな花のようだと思った。
俺が刻む音、
彼女が奏でる歌。
堪らなくなって、俯いた。
激しくダサいことに、泣きそうになったからだ。
叶わねぇと思ってた恋が実ったような……。
滲んでいく世界を認めたくなくて、俺は瞼を閉じた。
あー…ダッセ………。