「もう、夏も終わるんだな…。」
独り言のように千早が呟く。
花火に照らされたその横顔があまりにも綺麗で――俺は息を呑んだ。
思わず抱きしめたくなった時、
「壱。」
と俺の名を呼んだ千早。
抱きしめようとした手は、空中を彷徨う。
「俺のこと、いつも見てろよ。」
「え?」
「――それで、ちゃんと捕まえておいて。」
俺の心を破壊するには充分すぎる言葉と一緒に、千早は小さく笑った。
「…ヤダっつっても離さねぇぞ?」
千早は呟いた。
でも、それは打ち上がる花火の音に掻き消された。
掻き消されたけど、
千早の唇は確かにそう言っていた。
「(いいよ。)」