「3年前、カラオケボックスで千早は釣りも受け取らず、実際の金額の倍以上を払っていった。
母親にせびってって、千早は言ってたけど…それを口実に会いにいけるからだろ?」


「…………。」


「憎んでも憎んでも、憎みきれなかった。それは、どんなに断ち切ろうとしても、やっぱり親子だから。
大嫌いだと思っても心配で。
振り向いてもらえなくても、会いたくて――。」


「……だとしても!俺には…。」






頭を抱えて踞る俺に、そっと壱は触れた。





「この曲のタイトル、『空に唄えば』っていうんだ。」



しなやかにギターを奏でていた指先は、梳くように俺の髪を撫でた。





「母親に届くように唄え、なんて言わない。
真っ青な空に向かってさ、叫ぶように唄えばいい。」




俺は、壱を見上げた。


少年のようにキラキラとした瞳が、俺に向けられている。



「千早が折れそうになったら、何度でも支えてやる。
俺がずっと、千早を見てる。」


「……壱、バカだろ?」


「ん?」


「何で…そこまでするんだよ…。」









コイツは、何でこうなんだろう。




俺が辛い時、苦しい時。


いつもなぜかそこにいて、不器用な言葉を置いていく。



俺が背負った荷物を減らそうとして、テメェのことみたいに足掻く。





バカじゃねぇの…。