「…好きなのか?」
「はぁ?」
夕食後、風呂にも入って自室へ戻ろうとすると、バルコニーにいた壱に呼び止められた。
壱はアコースティックギターを手に、可笑しな質問をする。
俺はげんなりとして、白亜の壁に凭れかかった。
「何の話だよ?」
怪訝そうに視線を向ければ、壱は頭を掻きながら溜め息を吐き出した。
「香住のこと。」
「はっ?」
「さっきの千早、何か必死だったもんな。」
壱の言いたいことを理解して、次に溜め息を吐いたのは俺だった。
「んだよ、ヤキモチかよ…。」
「…あぁ、そうだよ。」
落とすようにそう言って、俺に背を向けた壱の耳は赤く染まっていた。