「香住が自分で決めたことなら、俺らは口を出すべきじゃない。
夢を追うも、諦めるも、
それは香住が決めるべきことなんだよ。」
そりゃ…そうだけど……。
壱の言ってることは分かる。
頭では分かる。
……でも。――でもさ!!
「…俺は嫌だ。」
「…千早くん。」
香住サンは、零すように俺の名を呼んだ。
「…ッ!せっかく!!せっかく親しくなったのに…仲間なのに!俺は嫌だ!!
香住サンがいなくなるなんて嫌だっ!!」
俺の声がリビングに響いて、それから沈黙に包まれた。
ガキみてぇなこと言ってんのは自分でも分かってる。
分かってるけど――。
「だったら、千早くん?」
香住サンは優しい微笑みを浮かべて問いかける。
「俺と結婚しようか?」
「………へっ!!?」
バカみたいに間の抜けた声が、思わず喉から飛び出した。
「俺についてきて、結婚すれば――ずっと一緒にいられるよ?」
首を傾げて問う香住サンに、俺は何度も瞬きを繰り返す。
俺だけじゃない。
香住サンを見つめたまま微動だにしない壱に、
口を金魚のようにパクパクとさせる梓月、
持っていたフォークを落としたリョウ。
つーか、香住サン…また敬語喋りじゃなかったし……。
これは…プロポーズ、なのか?
俺の脳がそう理解するまでに、けっこうな時間が必要だった。