ふいに。
香住サンが口を開いた。
「実は…皆さんに報告があるんです。」
「何だよ?急に改まって。」
パスタを頬張りながら梓月が問う。
香住サンは、酷く優しい表情で言った。
「――ここを、出ようと思っています。」
シン、と静まり返った。
まるで、時間が止まったみたいに。
「……何で?」
俺は、やっと声を絞りだした。
香住サンは俺を見つめて、変わらない柔らかい微笑を向ける。
「ずっと考えていたんです。
いや、本当はとっくに決めていたのかもしれません。
ただ、千早くんが来てからのここは、何だか妙に楽しくて先延ばしにしてきただけなんでしょう。」
誰も、何も言わなかった。
香住サンはフッと一息ついて、言葉を続ける。