クシャクシャのパーカー、スウェット。
『カラオケボックスの住人』と呼ばれていた千早。
泥だらけの千早。
調子にのっていた俺の心を折って、本気で音楽と向き合ってく決意をさせてくれた。
無愛想で毒舌の、千早。
再会した時なんて、
俺のことは覚えちゃいねぇし、いきなりキスするし。
“二人だけの秘密、だよな?”
食い意地が張ってて、態度がデカくて、おまけに頑固。
呆れるほど強がりで、意地っ張り。
“…唄うよ、俺は。”
駅の片隅、
涙を流す千早はやっぱり素直じゃなくて、俺の胸を何度も叩いた。
泣きながら。
あの時、俺は思っていた。
千早が泣くのなら、それは俺が受け止めたい。
そこにいるのは、自分でありたい。
ちぐはぐなメールに、
繋いだ手。
いつのまにか。
俺はこんなに、千早で溢れてる。