「千…早……。」
唇の端が切れたらしい。
赤い雫がポタリと床に落下した。
痛みに顔を歪めながら立ち上がる。
座り込んだままの梓月、
壁からズルズルと崩れ落ちたリョウ、
腹を押さえて倒れる香住。
「千、早……どうした…?」
一歩、近づくと。
千早は「来るな!!」と声を荒げる。
俺はその場に立ち止まった。
「俺は…やっぱりここに来るべきじゃなかったっ!!
ッ…お前…お前らとは、俺は違う……。」
叫び声は、泣き声で。
千早は震える肩で、
それでも涙を拭う。
拭っても、拭っても、涙は溢れていた。
「千早……。」
「ッ気持ち悪ィんだよ!!この身体がッ!自分がッ!
望まれて生まれてきたわけでもねぇっ!!どこの誰のガキかも分かんねぇっ!!俺は……俺はこのビデオん時のガキかもしれねぇっ……。」
――俺は、その時。
千早の涙の理由に気づいた。