床にポタ、ポタ、と落ちる涙。
千早は、とめどなくボロボロと泣いていた。
唇を、噛み締めて。
「千、早…?」
涙に濡れた瞳が俺を見据える。
「…どうした?」
その瞬間。
一度俯いた千早は、バッと立ち上がってテレビに近づく。
そして、再生中のままのビデオテープを力任せに引きずりだした。
「オイ!?」
梓月の声も無視して、
中のテープをビリビリと引っ張りだして、壁に投げつけた。
酷い音が、リビングに響く。
「……何が…AVだよ……!気色悪ィ!」
静寂に包まれたリビング、
千早の冷たい声。
「おい…千早、どうしたんだよ!」
梓月の手が千早に触れる――千早は梓月を殴り飛ばした。
床に崩れ落ちる梓月。
「ゴボッ!ッんでキレてんだよ…。」
「千早ぁ…どうしちゃったの…?」
リョウが心配そうに千早に歩み寄る。
けれど、リョウもまた千早に殴り飛ばされ、背中から壁にぶつかった。
慌てて止めに入る俺と香住、
千早は俺を殴り、香住の腹に蹴りを入れる。
まるで自分を抑えられない、
今の千早はそんなふうに見えた。