「香住!コレ!『堕天使』って!!」



梓月は興奮気味に、ビデオテープに貼ってあるラベルを読み上げた。






「え?あぁ。AVですよ。」




……おい、笑顔で言うなよ。





俺の中で、香住はやっぱり変態だという答えが導きだされる。








「これ!…だって…えぇー!!」




梓月はテンション高く、それは感動しているようにさえ見えた。



「何なのー?」

と、リョウが口にした。





「お前、知らねぇのかよ!AV女優・渚(なぎさ)の『堕天使』シリーズっつったら超レア物だぜ!」


「ナギサ?誰?」




素直にリョウが聞けば、梓月は大きな溜め息。




苦笑いを浮かべながら、代わりに香住が答えた。


「20年くらい前に活躍していたAV女優ですよ。
『堕天使』シリーズは彼女の代表作で、AVとしては考えられないヒットを記録したんです。当時は社会現象になるほどだったようで…。」


「今だって活躍してるっつの!」


食い気味にツッコむ梓月。







話を聞いていたリョウは少し考える仕草をしてから言った。



「でも20年前ってことは、今はもうオバサンでしょ?」


「テメッ!」


「あーそっか!梓月は熟女好きだから、今のほうがそそられ――!!」



ゴンッ!とリョウの頭を梓月が殴る。


「うわぁ〜ん!梓月が殴ったぁ〜!!」




そんなことはお構いなしに梓月は口を開く。





「これ捨てんのかよ?勿体ねぇなぁ〜。」


「そんなに気に入ったんですか?」


「……な、なぁ!これ、捨てる前に見てもいいか?」









……梓月、お前どんだけ執着心あんだよ。