香住サンは、真剣な眼差しで俺を見つめる。
「『この唇が、俺を惑わす。』」
俺の唇に触れる、綺麗な指先。
「『抑えられない欲望に支配されていく。
君の可憐な瞳が揺れていた。』」
「か、香住サン…?」
文章を…起こしてんのか?
香住サンの指先が、唇から首筋へと下がっていく。
「『その瞳でさえ、俺を煽る道具に過ぎない。』」
指先が、俺の鎖骨に触れた。
ドクン、と心臓が鳴る。
次の瞬間、もう一方の手が俺の腕を引いて――俺は、香住サンに抱きしめられていた。
「『無理やり抱き寄せて、小さな肩に顔を埋めた。
夢に見続けた君の匂いに眩暈がする。』」
「ッ!か、香住サンっ!も、もういいから!!」
「『そして、俺は口にした。』」
「え?」
香住サンは、俺の耳に顔を寄せた。
「『…イケナイ事してみませんか?』」
なっ!!なっ!!!
俺の思考回路は完璧に崩壊した。
何も、考えられない。
パニックになりすぎて言葉が見つからない。