ほんの少しばかり、俺とリョウの間に出来た距離をたった一歩で縮めてしまう。





反射的に俯くと、リョウは覗き込むようにして言った。







「もしかして感じちゃった?」


「ッ!テメっ!!」





振り上げた俺の拳を身軽に避けて――リョウは、俺の耳元に顔を寄せた。




「女の子、だもんね?問題ないよネ?」





耳に直接響く甘い声、吐息。



さすがはホストだ、と。

この危機的状況で、どうでもいいことが頭を過る。





完全にからかわれていると判断して、必殺キ○ケリをくれてやろうとした。










その時。






リョウの首をガシッと捉えて、俺から引き離したのは梓月だった。


「なぁにしてんだ、ゴラァ。」




首にギュウっと巻きつく梓月の腕、
リョウは「絞まるっ!絞まるっ!!」と涙目で足掻いた。






「腹黒でナルシストで変態?お前、それ逮捕もんじゃね?」


「コホッ!バカ梓月!!腹黒にも、ナルにも、人権はあるっ!!」


「変態にはねぇと俺は思うぞ。」


「ボクはっ!!ゴホッ!変、態じゃないーー!!」





リョウをズルズルと引き摺っていく梓月は、派手に笑っている。










俺は呆然と見つめながら、胸の奥の痛みに眉を寄せた。