「千早が来てから、みんな変わった。」


「は?」


「…他人のことなんか興味なかった俺たちが自然に集まるようになった。
一緒にメシ食ったり、よく話すようになったり。……全部、千早が来てからだ。」





小さな輝きが照らす、梓月の横顔。



すっと通った鼻筋や、形のいい唇はやっぱり美男子ってやつなんだろうな。


俺は、そんな事を思っていた。







「マジで強烈なのが来たと思ったよ、最初は。」


「?」



首を傾げる俺を見て、梓月が笑う。




「だってさ、歓迎パーティーの夜に、俺いきなりキ○ケリくらってんだぜ。
ヤベェの来ちゃったよ!と思うじゃん?」


「なっ!あ、あれは、お前がっ!!」




慌てる俺なんかお構いなしに、言葉を続ける。






「口は悪ィし、食い意地はってるし。」


「…………。」


「可愛げもねぇし、愛嬌もねぇし。」


「…………。」


「世間知らずで、ガサツで、チビで。」


「…………。」


「第一印象なんかホント最悪。」


「だぁー!もう分かったよ!うっせぇなっ!!全部まとめて悪かったな!!」




「でも、そんな千早だから好きになった。」








チリン、チリンと風鈴が鳴る。




赤い金魚は、優雅に泳いでいるようにさえ見えた。