蝉の泣き声と、風鈴の音が耳に届く。





耐えきれなくなって、俺は口を開いた。



「じゃあ!俺、戻るわ。」




自室に引き上げてしまおうとした、その時。


立ち上がろうとした俺の腕を梓月が掴んだ。




振り向けば、力強い目で梓月は言う。








「行くなよ。…ここにいろ。」




有無を言わせない態度。





「…線香花火も買ってきたんだ。
せっかくだから、やろうぜ。」








俯き加減の梓月の横顔に普段の騒々しさはなく、むしろ急に大人びて見えた気がした。