すっかり日が暮れてしまった。
それでも、夏の空は明るいと思う。
リビングへ入ると、そこには誰もいなかった。
ただ、ウッドデッキへと続く大きな窓が開け放たれていて、風にカーテンが揺れている。
チリンと涼しげな音がして、見上げれば窓辺に風鈴がかかっていた。
赤い金魚が描かれた風鈴――。
こんなの、あったか?
近づくと、さらに床にはブタの蚊取り線香。
夏らしい光景に、俺は思わず目を細める。
窓辺に立つ。――ウッドデッキに茶髪の後ろ姿。
すぐに梓月だと分かった。
気配を感じたのか、振り返る梓月。
俺と目が合うなり、顔を赤く染めて目を逸らした。
そんな態度とられると、俺までどうしていいか分からなくなる。
俺は、何も気づかなかったふりをして言った。
「この風鈴どうしたんだ?」
「…買ってきたんだよ。」
「…梓月が?」
「あぁ。」
ぶっきらぼうに背を向けて答える梓月。