「千早。」
「ん?」
「ライブをやろう、ここで。」
「…え?」
「俺は全力で曲を作るから、全力で唄ってほしい。」
「…………。」
「千早の夢は、もう一人ぼっちの夢じゃない。
千早の夢は俺の夢、俺の夢は千早の夢だ。――俺たちは二人で一つだ。」
握られた手に、壱の力を感じた。
「成功するかは分からない。けど、賭けてみないか?夢に、さ。」
温もりを感じる。――温かいと思った。
人の手が、こんなにも温かいことを俺は知らなかった。
「――賭けには勝たねぇとな。」
壱が俺を見つめた。
「壱が言うなら、俺はついていくだけだ。」
俺は、繋いだ手を握り返す。
ライブハウスの真ん中で繋いだ手は、酷く温かい。
俺たちを結んだ音楽、
夢の欠片が重なって生まれた音楽。
壱が紡ぐ音、
俺の歌声。
まだまだ青い果実だけど、少しずつ少しずつ色づいていく。
いつか熟す、
その時を夢見てる。
やっと、スタートラインに立てた気がした。