「久しぶりだな。」
壱はそう言って、二人は握手を交わした。
「3年ぶりか。哲也と組んでたバンド解散して以来だもんな。」
「あぁ。」
「よく戻ってきたよ。」
俺は呆然と二人の会話を聞いていた。
ふいに、男と目が合った。
男は物珍しそうに俺を見つめる。
「このコが?」
「あぁ。…千早、この人はここの店長でコウさん。
コウさん、こっちは千早。うちのボーカルだ。」
「どーも。」
いつもながら無愛想に挨拶をする。
コウさんは逞しい腕を組んで、ニカッと笑った。
豪快な笑顔だった。
「ウワサに聞く美少年だけはあるな。
3年前に、キミの話は壱から聞いたよ。“アイツは天才だ!”って騒いでたからな。」
「うるせぇよっ!」
壱は顔を赤くして、声を上げた。
コウさんは、またしても豪快に笑う。
「まぁ今度はフラれねぇようになっ!」
壱はバツが悪そうに頭を掻いた。