「…つーか、さ。」
「え?」
「梓月のことは、どうするんだ?」
壱は、そう言って急に近づいた。
顔と顔の距離がグッと近くなって、俺は不覚にもドキッとしてしまった。
「どう…って……?」
「梓月の気持ち、どうすんだよ?」
強い眼差しが俺を捕える。
耐えられなくなって、顔ごと目を背けた。
「…どうするも何も、梓月は俺を男だと思って告ってんだから……どうしようもねぇだろ。」
俺はそもそも男じゃねぇ。
だからゲイでもねぇ。
梓月の気持ちを受け入れるわけにはいかねぇんだよ。
梓月には悪ィけど、
俺に出来るのは、なるべく傷つかねぇようにフッてやる事くらいだ。
「…そうか。」
壱はそれだけ言うと、さっきまでとは打って変わって優しく笑う。
胸が締め付けられるような可笑しな感覚がして、俺は慌てて俯いた。
喉の奥が詰まるような息苦しさ、
壱を見てられなかった。
壱は、そんな俺に気づいていない。