「な…ん…イッチー…?」
「リョウ。」
何かを決意したかのように口を開いたイッチーの声は、ハッキリと通った。
雨音も、風の音も、恐ろしかったはずの雷鳴さえ、もうボクの耳には届いていない。
「千早は――女の子だよ。」
機能しない思考回路と同時に、今の感情が喜怒哀楽の何なのかも判断がつかなかった。
でも。
でも、イッチーの言葉をもう一度受け止めた時。
『千早は女の子だよ。』
瞬間、ボクの顔から火が吹いた。
カァッと熱くなって、ボクは顔を覆う。
ドクドクと五月蝿い心臓。
千早を押し倒した、瞳に焼き付いた千早の姿――女の子の姿。胸の感触。
――ダメだ、これは。
自分の胸を掴む、心臓をギュッと握ってしまいたい。