どれくらいの間、そうしていただろう。
ハッとしたように千早は我に返って、ボクを勢い良く殴り飛ばした。
頬が熱く、今まで味わったことのない痛みが広がっていく。
でも、そんな痛みなんて、どこかが麻痺しているのか気にならなかった。
千早は、絶望したような表情でボクを見据える。
「…女…の子……?」
やっと絞りだした声は、微かに震えていた。
バスタオル一枚を巻いた千早は――どう見たって、女の子だった。
その時、バサリと千早にかけられたずぶ濡れのジャケット。
見上げると、イッチーが立っていた。
ポタリ、ポタリと髪から落ちる雫。
ジャケットと同じ、ずぶ濡れのイッチーが立っていた。
いつの間にイッチーが帰ってきて、リビングへ入ってきたのかも分からない。
ボクの頭は、やっぱりうまく動いてくれない。
俯く千早と、真剣な眼差しでボクを見つめるイッチーを交互に見比べた。
微かに、イッチーの瞳が揺れている気がした。