「でもさぁ、あの衣装はねぇわ。つーか触角はねぇわ。」
「…うるせぇなぁ。」
「大体、あそこまで献身的に勇者に尽くしてきたてんとう虫が、ラストシーンで勇者に踏み潰されるってオチもないわ。
シュールすぎるだろ。」
「そーゆー世界観なんだよ!」
千早の感想は毒舌だらけ。
可愛げもない。
愛嬌もない。
おまけに、はっきりと物を言いやがる。
俺は千早の横顔を盗み見る。
自分の肩程もない身長の、小さな千早。
ときどき曖昧に笑う、綺麗な横顔。
それは酷く繊細で、俺なんかがガサツに触れてしまえば簡単に壊れる気がした。
俺は、だから。
心で願った。
家路へと向かう、
この道程がいつまでも続いてくれればいい。――それが無理な願いだと、分かっていても。