幕が下りる。 見えなくなる客席、やがてワインレッドの幕に視界を遮られた。 俺はまだ芝居の世界にいて、現実を遠くに感じていた。 何もかもを出しきった。 心地いい疲労と、 晴れ渡るような充実感、達成感。 劇団の仲間たちと握手を交わしながら、温かい感動が俺を包んでくれている。 ――千早は来てくれただろうか。 俺は打ち上げの誘いを断って、慌ただしく着替えを済ませると外へ飛び出した。