花本千早が辿り着いた先は、公園だった。
陽は沈んで、公園の遊具はうっすらと暗くなった中に佇む。
風が冷たくなってきた事もあってか、人の気配はなく嫌に静かだった。
花本千早は噴水を横切ると、階段を上って木々が騒めく方へと向かっていく。
そちらに、道らしい道はないはずだった。
渇いた草や木の枝を掻き分けていくと、木々に周囲を囲まれた広々とした場所に出る。
目の前には灰色の壁があって、それに沿うようにブルーシートで作ったらしいテントがいくつか連なっていた。
そして、花本千早はその中の一つへと入っていった。
ここがホームレスたちの棲み家であることは明らかだ。
困惑していると、花本千早はテントの中から顔だけを出して叫んだ。
「シゲさーーん!!」
ほんの少しの間の後、
どこからかシャガれた男の声が届く。
花本千早はテントから飛び出すと、駆け出していった。
慌てて後を追いかける。