膝を抱えてリビングのソファーで寛ぐ千早は、めちゃくちゃ機嫌が良かった。
「――それでさ、採用されたわけだよ!」
「お、おぉ。」
今日、千早はバイトの面接に行ってきて採用されたと、弾けるような笑顔で話す。
最近、千早はよく笑うようになった。
家の近所にある、レンガ造りの古い喫茶店『ジロー』で、さっそく明日から働くらしい。
「バイトなんか初めてだからさぁ!すっげぇ楽しみ♪」
今日の千早はテンションが高い。
「働くってさぁ、何つーか、自分の存在を認められたみたいな気がする。」
そう言って、千早はクスクスと笑い、抱きかかえていたクッションに顔を埋めた。
それだけのことなのに、
俺の胸はバカ正直に高鳴るわけで。
自分でも、頭イカれてるなと思う。
分かってる。千早は男だ。
男の千早に、俺は――。