俺はぼんやりと見惚れていたが、ハッとして我に返る。




慌てて片手で顔を覆って、俯いた。





「どうした？」、と不思議そうに問う千早くんに返事を返す余裕はない。



顔が熱く、身体中の血が上へ上へと昇っていく気がした。


……たぶん俺の顔は赤いんだろう。ガラにもなく。









どうやら、俺は千早くんの笑顔に弱いらしい。





かなわない。――かなわない、と思った。












「どうしたんだよ？香住サン？」


「……いや、気にしないでください。」


「？」


「そ、それよりアルバイト探してるんですよね？」


「え？あぁ。」


「それなら、ここの喫茶店なんていかがですか？
雰囲気も良いですし、家からも近いですよ。」


「ここ？」


「えぇ。確かオーナーが新しいアルバイトを探していたはず……。」


「マジで！？」


「……オーナーとは親しくしていますから、話しておきましょうか？」


「……ッ！香住サン！！アンタやっぱ神だよぉぉーーー！！」





千早くんは、俺の両手を掴むと、また極上の笑顔で瞳を輝かせた。









俺は息を呑む。







面白い。癒される。可愛い。飽きない。――そうやって、いつしか千早くんを目で追っていた。

















誰もかなわないだろう。