花本千早は今朝と同じ駅のコインロッカーを開けると、今朝と同じ紙袋を持って、
やっぱり女子トイレへと消えた。
数分後、
姿を見せた花本千早は、もう名門女子高校のセーラー服を身に纏っていない。
クシャクシャに汚れたパーカー、濁ったような色のスウェット。
慣れた様子で髪を一つに束ねると、荷物をコインロッカーへと戻した。
どこへ行くんだ?またカラオケか?
しかし、花本千早は繁華街とは逆方向へ歩きだす。
俺は見失わないように細心の注意を払いながら、
再び後を追った。
花本千早は両手をスウェットのポケットに突っ込んで、俯きながら歩いていた。
先程、美しささえ感じたはずの背中は猫背ぎみ。
擦れ違う人々は、
一瞬、花本千早を見やるが、すぐに目を逸らす。
透桜女学園高校の生徒である面影は一切ない。
服装だけで人間はここまで変わるものなのか、と変なところで関心してしまった。