ちぐはぐな文字、
ケータイに慣れていない千早は濁点が打てないらしい。
変換も出来ないようだ。
たどたどしいメールを読んで、暗号を解読したような気分になった。
嬉しい。嬉しかった。
俺は必死に、だらしなく緩んでしまう顔を隠す。
梓月の話が続いていたからだ。
「――なのに、だ。」
「え?」
「………俺、ゲイかもしれない。」
「…………はぁ!?」
何言ってんだ…?
驚く俺に対して、梓月はまるで諦めたみたいに冷静だった。
「…壱。俺、好きな奴がいる。」
「…………。」
「好きなんだと思う。」
梓月が、この後何を言うのか分かってしまう俺は、どうかしてるんだろうか。
まさか、と思った。――そう、思っていたかった。
でも、梓月の苦しく切なそうな、真剣な瞳が全てを語る。
知ってしまった。
そして、
俺自身も気づいてしまった。
『――ありかとう、きさやろお』