その夜、俺は風呂上がりにバルコニーで涼んでいた。
蝉の大合唱は鳴き止むことを知らないかのように、永遠と続く。
「あーぁ。何だかなぁ。」
独り言を呟く。
すると、そこに返事が返ってきた。
「何だかなぁって?」
振り向けば、丁度バルコニーへ入って来るところの梓月。
「…別に。」
言葉を濁す俺、でも梓月は気にしていないようだった。
「…今日、ファンが出来たんだって?」
「え?」
「千早が、さっき嬉しそうに言ってた。」
「…そうか。」
途切れる会話。
何となく、俺は最近……梓月が苦手だ。
梓月といると、自分でも分からない何とも言えない感情が沸き上がってくる。
特に、千早の事となると。