「――ッ!!な、んで…。」
千早は酷く驚いた顔をする。
「いろいろ不便だから、さ。……お前にやる。」
「俺っ!金払えねぇよ!!バイトなんか、この間かぎりだしっ!!」
「いいよ、金のことなんか。バイト見つかったら、その時は自分で払え。」
「………ッ!」
俯く千早。
――俺は、千早の頭をクシャクシャと撫でた。
「千早には、オレンジがよく似合う。」
夕焼けみたいな、
あったかい あったかい オレンジ色が。
「…俺、ぜってぇバイト見つける!見つけて、すぐ払うからっ!!」
擦れた涙声。
千早は俯いたまま。
「そうだな。…けど、無理はするな。」
千早は極まりが悪いのか、照れ隠しなのか、
「何が罰だよ、キザヤロー。」
と、憎まれ口をたたく。
それから、少し冷静になったのか、千早は呟いた。
「でも、何で…誕生日でもねぇのに……。」
「…まぁ、俺らにファンができた記念日?」
……なんて、言い訳だけど。
本当は気づいてる。
これは、きっと、
独占欲以外の何物でもない。
俺が千早の手に載せた物――オレンジ色の携帯電話を、千早は珍しそうに見つめる。