曲が終わり、顔を上げる。
――すると、目の前に二人の女子高生が立っていた。
着崩した制服に、茶髪の、まだあどけない顔立ちをした二人は戸惑いながら口を開いた。
「あの…スゴい良かったです!!」
「…え?」
何のことか分からず呆気にとられる。
食い気味に、もう一人の女子高生が言った。
「今の何て曲ですかぁ?CD欲しー。」
「あっ、いや、俺らの曲じゃねぇから。」
俺たちの音楽に足を止めてくれたのだと理解して、
千早を見れば、なぜかキョトンとしている。
突然のことで現実味がないようだ。
最初に口を開いたほうの女子高生は、やっぱり戸惑いつつ今度は千早に声をかけた。
「…あの……声綺麗ですね。」
「え…あ…ありがとう。」
「あの、いつもここで唄ってるんですか?」
「あー…いや、とりあえず金曜だけ。」
「そっか。…あの……応援してます!」
「あ…ありがとう。」
「あ、えっと、バンド名教えてもらってもいいですか?」
千早は一瞬固まる。
それから、片手で顔を覆って俯いた。
「あ〜…『Baby Apartment』…。」
千早が照れている。
その様子は、あまりにも可愛くて。
ニヤリとわざとらしい視線を向けると、千早は不機嫌にそっぽを向いた。
喜びと照れ臭さに耐えかねたらしい。
素直じゃなくて、意地っ張りな歌姫の耳は真っ赤だった。