家路を急ぐサラリーマン、無邪気に遊ぶ高校生。
誰かと待ち合わせをしている様子の、仕事帰りのOL。
今日も駅前の片隅、
蝉の音と共に俺たちが響かす音楽は夜空へと舞っていく。
俺の左側には千早がいて、その美しい歌声に思わず酔いしれてしまう。
蒸し暑くなってきた夏の夜に奏でる曲は、
軽く涼しげな曲調の、でも何となく切なくさせるような、そんな曲だ。
店のショーウインドーの明かりやちっぽけな電灯、銀色の月に照らされて唄う千早は、この曲によく似合って。
歌姫という言葉は千早のためにある言葉だとさえ、思ってしまう。
勿論、ぜってぇ口には出さねぇけど。
コイツと音楽ができることを、俺は誇りに思う。