おかしな夜だった。
リビングで酒を飲み、自室へ戻る者はいなかった。
香住はテーブルに突っ伏して、
梓月は床に大の字になって、
リョウはソファーでクッションを抱えて、
それぞれ自由に寝ている。
俺は一人、コーヒーを飲み続け、結局朝まで起きていた。
明け方近く、少しウトウトとしたくらいだ。
マグカップのコーヒーは、すっかり冷めている。
テーブルにも、黒と白の市松模様のピカピカとした床にも、缶ビールの残骸が転がっている。
階段の上のステンドグラスから、朝の光が差し込んでいた。
コーヒーの飲み過ぎで胸焼けがする。
俺は最近禁煙していた煙草に、久々に手を出した。
安っぽいライターで火をつけた時、
玄関のドアが開いた気がして俺は振り返る。
足音、開くリビングのドア。