それからバイトを終え、
家に帰り着いた頃には、もうすっかり闇に包まれた夜で。
「あー、壱。おかえりなさい。今日はパスタですよ。」
香住はキッチンに立ちながら言った。
リビングには落ち着きなくウロウロと歩き回る梓月と、テレビを見ているリョウ。
「おい、梓月。お前…何やってんだ?」
明らかに挙動不審な梓月に問うが、聞こえているのか、いないのか、反応がない。
代わりに俺の疑問に答えたのは、香住だった。
「帰ってきてから、ずっとあの調子なんですよ。
よっぽど千早くんのことが気になるんでしょうね。」
俺は複雑な気持ちになる。
胸の奥が痒いような、痛いような。
心臓を掻き毟りたい、
そんな気さえした。
最近、梓月を見ているとこんな事ばかりだ。
梓月が千早に何らかの言動をする、その度に。
それは、どこか苛立ちにも似ていて。
なのに、千早を見ていると目が離せなくなる。