人の姿も疎らな早朝。
空気は凍えるほど冷たい。
カラオケ店のある繁華街から一番近い最寄りの駅に、少年はいた。
コインロッカーを開けて、汚れている紙袋をいくつか引っ張りだしていた。
影から、その様子を見つめる俺の頭に浮かんだ一つの可能性。
もしかして、家出少年?
少年は紙袋の中から一つを手にすると、他を再びコインロッカーに戻した。
それから少年が向かったのは、駅のトイレ。
少年の動向をぼんやりと眺めていた俺は、
次の瞬間身を乗り出していた。
少年が入っていったのは、女子トイレだったからだ。
訳が分からない俺は、それでもそこに立ち尽くしていることしか出来ない。
少年の姿が見えなくなってから数分後、
女子トイレから人が出てきた。
それを見て、俺は呆然とする。
出てきたのは、確かにあの少年だった。
けれど、
ボロ布みたいなパーカーも、ボロ雑巾のようなスウェットも着ていない。