その夜は、どういう訳か、深夜になっても眠れなかった。




ベッドに潜り込んでから数時間……。


静かな夜に、時計の針の音が響く。








……眠れない理由、本当は分かっていた。




捨てたはずの“変態的思考”が、悶々と駆け抜ける。



すぅーっと雫が流れ落ちるジンの背中、指先の熱が頭から離れない。







溜め息を零し、寝返りを打った。




その時だった。







部屋の扉をコンコンと叩く、
扉が開き、ジンが顔を覗かせた。









「…ツバサちゃん、一緒に寝てもいい?」


「………いいよ。」






慌てることもなく、ごく自然に呟いた自分に呆れてしまう。










ジンがベッドの中に入る。


布団をかけてやりながら、私は思い出していた。





いつだったか、ネットで見た『犬の飼い方』。




“発情という体の変化はメス犬だけ。”、
“オス犬に発情期はない。”、
“発情期中のメスの匂いを嗅ぎ分けて発情する。”








「あったかい。」




暗闇の中で、ジンが呟く。




明かりは窓からカーテン越しに差し込む月明かりだけ。


今夜は、満月だ。