また扉が開き、バタバタとスーツを着た男が駆け込んでくる。
「総理!そろそろ…!」
「…あぁ、分かった。」
本宮貴一郎は、椅子から立ち上がると私の手を放した。
その後ろ姿に視線を向ける。
初めて見る父親の背中は、広いとも大きいとも思わない。
私が成長しすぎたせいかもしれない。
ずっと、ずっと、憎んでいた。
私は、あの人を。
なのに、
あの人の顔を見て、
たった一言の自分にかけられた言葉を聞いて、心に風が吹いた気がした。
私は、ママと同じだったのかもしれない。
あの人を、ずっと待っていたのかもしれない。
憎しみながら、ずっと。