室内を見渡すと、目の前には海を描いた綺麗な絵画が飾ってある。
テレビに、高そうなソファーに、硝子のテーブル。
一人部屋。
……また、金か。
点滴につながれた私の左手を握ったまま眠る男を見やって、観月さんに尋ねた。
「どうして、この人がここにいるの?」
「翼様……。」
「こんな所にいたら、まずいんでしょう?」
観月さんは、一度躊躇ってから口を開いた。
「……まずいですよ。」
「…………。」
「ですが、私が止めても、お聞きになられませんでした。
翼様が倒れたと申し上げたら、周囲が止めるのも聞かずに……。」
「…なにそれ。葬式にも来なかった奴が?」
「あの時もっ!…私たちが必死に止めたのです。」
「えっ?」
「……立場、というものがございます。
先生は、いつも美空様と翼様を思っておられました。ですが、思いにまかせて自由に動ける立場ではないのです。」
「…………。」