ただ、しばらく白い天井を見上げていたが、
次第に意識がはっきりとしてきた。
歩美とコンサートに行って……マンションまでは覚えてる。
そこから先の記憶がない。
私は倒れたのだろうか。
だとすると、ここは病院………。
そういえば、病院特有の湿ったような薬品の匂いがする。
重い体を無理やり起こそうとして、私は初めて気づいた。
私の手を握る、皺が刻まれた大きな手。
ベッドに突っ伏して眠るスーツ姿の男。
……驚いた。どうして、この人がここにいるの?
その時、カラカラと扉の開く音がして、入ってきた観月さんと目が合った。
「翼様!ご気分は?大丈夫ですか!?」
「あっ、うん……。」
「倒れていたところをマンションの住人の方が見つけてくださって、救急車で運ばれたんですよっ!」
「…………。」
「栄養失調だそうで……ろくな物を召し上がってなかったんでしょう!?」
……そういや最近、食欲もなくて……コンビニ弁当とかファーストフードとか………。
「あぁ〜、でも大事に至らなくて良かったです。
どれほど心配したことか…。」
観月さんはポロポロと涙を零す。
それを自らのハンカチで拭った。