「翼!忘れ物ない?大丈夫?」
「大丈夫だってばぁ。」
「ほらっ!お弁当!」
「やだ。いらない。」
「えぇ?」
「パン買うから、いいの。」
ちょっとした反抗期だったんだ。
「パンって……せっかく作ったのに。」
この頃の私は、
「別に頼んでないし。」
小さなことにイライラしていた。
「そうね。翼、はい、“行ってきます”は?」
いつもしていた挨拶。
私が「行ってきます」と言って、
ママは私の髪にキスをする。
いつもしていた当たり前の決まり事だったのに。
あの日に限って私は―……。
「ウザっ。」
―――それが、最後だった。