春が過ぎ、梅雨が明けて、
もうすぐ夏がやって来る。







それを予感させるように、今日は日差しが強く汗ばむ。




けれど、吹く風は爽やかで初夏のいい匂いが立ちこめていた。



匂いに混じるのは、周囲の女の子たちが放つ香水。





どこまでも長く続く列に並ぶ私と歩美の前にも後ろにも、同年代の女の子、女の子、女の子。



ウザったい暑さの中で、こんな列に並んでいられる彼女たちのエネルギーを、
私は素直に尊敬する。







私は、もうすでに辟易していた。












「そんな大切なら、ビラでも作って貼ってみたら?“迷子です”って。」




歩美の言葉を聞きながら、私は果てしなく伸びる列の前方を見つめていた。


この先に、何があるっていうんだろう。










「……本当に、ただの迷子なら良かったのに。」


「えっ?」


「…何でもない。」