「ただいまぁ。」
玄関の扉を開けて、
私は息が出来なくなった。
スーパーマーケットの袋は、私の手から落ちた。
目の前には暗闇が広がっている、
「おかえり」と言って駆けてくるジンの気配もない。
電気をつけて、部屋中を探す。
いない、いない、いない、イナイ………。
どこに行ったの…?
ジンの姿は、どこにもなかった。
走ったわけでもないのに、私の喉はカラカラに渇いている。
きっと。そう、きっと、また散歩にでも行ったんだ。
大丈夫。うん。
それで、迷子になっていたり…ね。
きっと、そう。
言い聞かせて、必死に落ちつこうとした。
そうだ、カレーライスを作らなくちゃ。
カレーライスを作って、出来上がって……それでも帰ってこなかったら、迷子になってるんだよね?
そうしたら、探しに行けばいい。
買ってきた食材を冷蔵庫に入れようと、私はその扉を開けた。
そして、また、心臓が飛び跳ねた。