歩美と桜助の話を聞きながら、帰るタイミングを窺っていると教室に甘ったるい声が響いた。
「オースケ先輩〜!」
視線を向けると、こちらに駆け寄ってくる………あれは、ナナセちゃんだ。
シャンプーのCMみたいにサラサラの長い茶髪が揺れている、
キラキラと輝く瞳、
小柄の可愛らしいギャル。
ナナセちゃんを確認した桜助と歩美は、ほぼ同時に呟いた。
「やっべぇ!」
「嘘!?修羅場!?」
……歩美サン、修羅場って…。
ナナセちゃんは、桜助の腕に絡みつくみたいにしがみ付いた。
「オースケ先輩〜!最近、全然会ってくれないから……ナナセ、来ちゃいましたぁ。」
「あ、う、うん…。」
ナナセちゃんの声は甘ったるく響き、それはアニメの声優を連想させた。
中学時代、部活の後輩だったナナセちゃん。
当時は、現在のような派手さはなかったものの、男子からは“守ってあげたくなるタイプ”の女子としてモテモテだった。
けれど、その頃は甘ったるい喋り方ではなかったし、アニメ声でもなかった。
……しばらく見ない間に変わるモンだなぁ。
そんな事をぼんやりと考えていると、ふいにナナセちゃんと目が合う。
すると、ナナセちゃんはぱぁっと笑顔を見せた。