「…腹…減った……。」
力なく、男は呟く。
名前も知らない、どしゃ降りの雨の中で裸足の男。
……普通じゃない…。
面倒な事はゴメンだった。
けれど、それでも、この男を連れてきてしまった。
その理由が、自分でもさっぱり分からないのだった。
エレベーターが51階へ到着して、私はもたつきながら降りる。
そうして、自分の部屋の前まで辿り着いて、なんとか鍵を開けた。
雪崩のように、玄関に倒れ込む。
男は小さな呻き声をあげた。
私は電気をつける。
そこで、やっと一息ついた。
一人で住むには広すぎる2LDKの部屋、家賃109万円の高級マンション。
私は靴を脱ぐと、ドタバタと部屋に入る。
その足音で、男はむくりと起き上がった。